端を向いて歩こう。(仮名)

フリーライター・キクタヒロシのブログです。アメブロから引っ越してきました。

あらすじだけなら二時間のサスペンスドラマ!?

いよいよ冬も真っ盛り、毎年恒例、インフルエンザは最高潮、ノロウィルスも流行し始めているようですね。お陰様でボクは今のところ、ただの風邪しかひいてないンですが、ココ二週間ばかり直りかけては肉体労働に晒され悪化、という悪循環に苦しめられています(苦笑) 

ホント、人間なんて病気になった時のみ健康の大切さを痛感するのですけれども、あまり普段から健康に気を遣い過ぎるのも考えものです。

 

以前、ボクが付き合っていた彼女は、普段から健康のためにナチュラル嗜好であって、ジャンクフード大好きなボクはよく叱られていました(苦笑)。ある時など「そんな保存料が入ってるものばかり食べていると、保存料が体に溜まっていて死んでも死体が腐らないんだぞ!」と、ボク的には何の不都合があるか分からない説教をされましたので、「んじゃぁ、カラマーゾフにでてくる長老がジャンクフードを喰ってれば、アリョーシャも信仰を失わないで済んだのにな♪」とハイブロウな切り返しをしたのにマジギレ、しばらく口もきいてもらえなかったのでした、とさ。

 

と今回、そんな強引な導入で始まりますは『カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー・著)のオススメです♪ 

皆さん、その書名は知っていても実際に読破した事がある方は少ない(注1)のではないでしょうか?普段、こんなゴミみたいなマンガのことばっかり書いているボクなんですが、個人的に全ての書物の中で最高かつ完璧な物語と思っているのがカラマーゾフの兄弟なのです!

 

本書は、ボク的に一言で表すなら“人間という不可解な存在を見事に描き切っている”、驚愕の作品です。極論するなら、他の全ての作品は『カラマーゾフ~』の前では霞まざる得ないとまで思っているのです。 

そんな『カラマーゾフ~』、個性豊かなカラマーゾフ家の男たちを通じて、神と信仰、親子の関係、国家の在り方などの思想が描かれています。 

家長であるフョードルは自己中心的かつ女好きの土地成金です。その長男であるドミートリィはある意味純真なのですが、自分の気持ち最優先という社会的には困った性格であり、カーチャという婚約者がありながらルーシェンカというフェロモン全開な女を実の父親と奪い合いしています♪そして後妻の子であり、次男の無神論者で革命を志すイヴァンはカーチャに惹かれており、そんなイヴァンに傾倒している下男のスメルジャコフ(ロシア語で臭いモノという意味)は、実はフョードルの隠し子らしい、というなんだか困った登場人物のみなのですが、そんな中、一服の清涼剤的な役割を果たしているのが一応の主人公である三男アリョーシャの存在。 

彼は敬虔なクリスチャンで心優しい真面目な美青年であり、人々から聖人君子を崇められ、尊敬を集めている修道院の余命短い長老ゾシマに仕えていましたが、ゾシマの死後、その信仰に疑問を持ち始めてしまいます。何故かと言えば、それはゾシマの遺体から異臭が漂ってきたから。まぁ、死体を放置しておけば腐乱するのは当然なのですが、当時の教会の教えでは聖人の遺体からは素晴らしい芳香が漂うとされていたので、<なんであんな立派なゾシマ長老から異臭が!>となってしまった訳です。 

まぁ、ぶっちゃけ言っちゃいますと主人公であるアリョーシャにはどことなく脇役感が漂っておりまして(→これは『カラマーゾフの兄弟』が実は二部構成で書かれる予定であり、第二部からアリョーシャが物語の中心になる構想だったものが、執筆前にドストエフスキーが逝去してしまったためと思われています)、実際にはフョードルとドミートリィ、親子のドロドロした女の奪い合いの最中、何者かに父が殺害されてしまう事を軸に物語は展開してゆき、荒筋だけ書いてしまうとまるで二時間枠のサスペンス及びメロドラマの様相を呈してしまう可能性さえあります。

 

しかし、それは表層だけを読んだ場合。その意図されたモノを読み取ってゆけば、そこに善を欲する心を持ちながらも、時として当然の如く人道を外れる事が出来るという、矛盾する側面を平然と併せ持つ事が出来る“人間”という不可解な存在を赤裸々に描かれている事が理解できるはずです。

 

…なんですけど、以前観た『カラマーゾフの兄弟』の映画はやっぱ二時間枠のメロドラマ風だったのには苦虫を噛み潰したかのような想いを禁じ得ないボクなのでした、とさ(=_=;)

 

(注1)ロシア文学はその登場人物の呼び名が名前、愛称など2~3通りあり読んでいて混乱を招き易く、また、ロシアの当時の時代背景が分かっていないと理解できない箇所も多いなど読破の障害が多く、途中で嫌気が差す人が多いようです。とりあえず、ボクの周りでは『カラマーゾフの兄弟』を読み始めはしたものの、序盤で投げ出した人が8割方でした(苦笑)。 

昨年、それらの問題点を改善した『新訳・カラマーゾフの兄弟が発売され異例のベストセラーとなったようですが、個人的にはオススメしません。ちょっと読んでみただけですが、文体が軽く感じられました。どうせ読むなら新潮社から出ている原卓也氏の訳が文学的重厚さを醸し出しておりますので、そちらを強くオススメします♪