ハシッコばっかりメにトマル。(仮)

フリーライター、キクタヒロシのブログです。新刊『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』発売中です!

“まんがで読破”のデはヲみたい( ̄ー ̄;

先日、某大型古書店が“本全品半額セール”をやるというので行ってみたのですが、店内に踏み入ると人また人でウンザリという有様、以前から気になっていた本などは片っ端から無くなっておりました(苦笑)

 
それでもせっかく半額で買えるのですから、以前からちょっとだけ気になっていた<まんがで読破>シリーズ(イーストプレス刊)の『蟹工船』を購入してまいりました。

 

ところで、昨年に突如沸き起こった蟹工船』ブームには驚かされましたね。まさかこんなにもヘビィーな作品が40万部も売れるとは!

 

蟹工船』は貧困に喘ぎ、搾取され続ける存在である労働者たちの資本者階級との闘争を描いた所謂プロレタリア文学作品で、現代の格差社会における若者が抱える不満や怒りという今の風潮とシンクロしたのでしょうが、いくら今の労働環境がヒドイったって、『蟹工船』で描写されているほどの過酷さなんて滅多に無いはず。まぁ、「コレに比べれば自分なんてまだマシ」という安心感を得るために読まれているフシもあるんでしょうけど(苦笑) 

で、<まんがで読破>版『蟹工船』を読んでみたのですが、コレ、似て非なるものになってませんか?確かにあらすじはちゃんと追ってはいるんです。でも、物語全体を覆う雰囲気が全く違う。抽象的な表現になってしまいますが、原作が<絶望の闇の中を這いずり回りながら、なんとか生きている>という感じなのに対し、まんがで読破版は<絶望的な状況下におかれながらも、希望の光を探している>といったトコロ。簡単に言ってしまうと、マンガ版の方は、なんか登場人物が熱血しているんですよね、特に主人公が。っーか、原作には主人公などもともと存在せず、虐げられた労働者たちを群像として描いているんですが(苦笑)

 

これらは“マンガ”として成立させる際に、読者に物語を分かり易くするための変更点だと思いますが、正直に感想を述べさせてもらうなら、『蟹工船』を原作にした別作品になっている感が拭えません。 

<まんがで読破>のコンセプトは“現代の一般人にはなかなか読まれていない名作文学を「漫画」という形で親しんでもらう”事らしいので、それはそれで良い事だと思います。ただし、<まんがで読破>シリーズを読んで、実際にその作品を読んだ気になってしまうのはどうかと思います。 

あくまで<まんがで読破>は文学を原作にかかれた(マンガ家他の主観が混入されている)“マンガ”であり別物原作への興味を持つためのとっかかりと考えるのが良いでしょう。

 

でも、<まんがで読破>で読んでしまった、スジを知っている作品の原本を読む気が起こるかどうか、そこが微妙だよな~(=.=;)