大魔鯨
未だに書庫の整理中なのですが、物を見直してみて「う~ん、良いなぁ」と再確認したマンガの記事を少し。
川崎のぼる先生の『大魔鯨』。
昭和43年に朝日ソノラマより刊行された短篇集です。
朝日ソノラマのコミックス=「サンコミックス」(以下サンコミ)の初期ナンバーは背表紙のタイトルフォントが手書きで味わい深く、巻頭にカラーページが挟んであるなど装丁・造本ともにステキです。20年ぐらい前はサンコミックスの蒐集こそが“新書漫画コレクターの王道”とされていたのですが、それも納得の出来。さらに刊行作品のラインナップも粒ぞろいとくれば言う事無し、だったのでした。
中でも『大魔鯨』は本自体の風合いが良く、それだけでも保護しておきたい本なのですが、内容的にも特筆すべき点があります。
表題作でもある『大魔鯨』は梶原一騎の原作。『巨人の星』コンビでの作品なのですが、この単行本にしか収録されていないのです。
メルヴィルの『白鯨』を下敷きにしたと思われるこの物語、明治初頭のとある漁村を舞台に、出身により理不尽な差別を受ける兄弟を主人公におき、大魔鯨と恐れられる巨大鯨、大魔鯨に片足を奪われ復讐を誓う旅のモリ師などを絡め、人間の尊厳、気高さなどを描いています。