ハシッコばっかりメにトマル。(仮)

フリーライター、キクタヒロシのブログです。新刊『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』発売中です!

『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』のお蔵入り原稿を、ここにちょこっと。

さて、いよいよ本屋さんに並び始めた

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『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』(まだ未入荷のところは、台風の影響で少し到着が遅れる可能性もありますが、月末頃には届くかと思います)ですが、実はこの本、お蔵入りとなった原稿がかなりあります。

 

彩図社さんの担当編集氏が「どうぞ自由に書いてください」と言うので本当に好き勝手書き、更には「もうそろそろ予定しているページが埋まりそうですので・・・」という担当氏に対し「えっ、まだこれから小ネタを書こうと思っていたところだから。豆知識みたいなのがあると、読み応えも違ってくるし。なんなら字を小さくしてもいいんで、なんとか突っ込んで」とゴリ押しして原稿を書き続けた結果、相当量が本から溢れ出たのでした。
やっぱり、「自由」の意味を履き違えちゃいけませんね。

 

まあ、そんな泣き言はともかく、今回は『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』への収録は見送ったコラム、レモンコミックスの占いシリーズ(勝手な命名)を掲載いたします。
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立風書房レモンコミックス
「手相恐怖シリーズ」「血液型恐怖シリーズ」「星座恐怖シリーズ」

占いって不思議ですよね。当たるも八卦当たらぬも八卦、科学的根拠は無いと分かっていても、ついつい気になってしまうもの。
一般的に男性よりも女性の方が占い好きとされており、そうなれば基本的には女子向けレーベルであるレモンコミックスにも、占いをテーマにした作品があるのはごく自然な流れと言えます。
これは推測なのですが、編集よりテーマを決めての執筆依頼をしていたと思われ、「手相占い」を好美のぼる(注1)、「血液占い」は森由岐子(注2)、「星座占い」が広永マキ(注3)といった具合に、それぞれのシリーズを手掛けています。
無論、先生方によって作風の違いはあるものの、占いから導き出される性格や運勢に主人公が翻弄されるという点では共通しておりますので、ここでは森由岐子『A型血液の少女』を例に挙げてご紹介いたしましょう。
バレリーナでA型のあゆみがデパートで髪飾りを物色中、館内放送で呼び出されてしまいます。プリマを争うライバル、由紀との待ち合わせを失念していたのです。慌てたあゆみは髪飾りを試着したまま店を出てしまい、万引き犯と間違われてしまうのですが、ここで突如、「プライドが高く他人に対して悪く思われないように神経質なほど気をくばるところがある」などという、血液型がAである人の説明が入ります。
なんだか酷い言われような気もしますが、あゆみはその説明通り、万引犯にされるなど耐えられないと取り乱したところを、由紀に目撃されてしまうのです。
で、あゆみが他言しないよう懇願すると、由紀はプリマの座を譲るならと嫌な感じの交換条件を出し・・・と、こんな感じでA型が持つ性質が悪い方にばかり作用して、ドツボにはまってゆくのでした。
これらの作品群は怪談でありつつミステリー要素や恋愛話も加味されているものもあり、バラエティに富んでいます。中には占いを無理矢理絡ませてある感が強い作品もありますが、そこはご愛敬。占いを作品に反映せねばならないという制約の中でなされた先生方のお仕事は、一見の価値ありです。

 

(注1)「手相占い」を好美のぼる
好美のぼるは「手相恐怖シリーズ」として『あっ!生命線が切れている』(昭和59年7月15日初版。84番(初版時はナンバリング無し。再販時に番号がふられました)、『運命線は血みどろの蛇』(昭和59年12月15日初版。90番)、『頭脳線甦ったミイラ』(昭和60年7月15日初版。97番)、『感情線悪魔の子守唄』(昭和61年6月15日初版。110番)を描き下ろしています。

f:id:buraburablue:20171028021312j:plain→画像は昭和60年4月15日発行の第2版表紙絵。初版本は表紙絵の周りに枠がありませんでしたが、再版時に装丁がマイナーチェンジされ、他のシリーズのものと統一されました。

(注2)「血液占い」は森由岐子
森由岐子は「血液型恐怖シリーズ」として『A型血液の少女』(昭和59年6月15日初版。85番(これも初版時はナンバリング無し)、『B型血液悪魔の誘惑』(昭和59年12月15日初版。89番)、『O型血液スチュワーデス殺人事件』(昭和60年7月15日初版。96番)、『AB型血液恐怖の黒髪屋敷』(昭和61年6月15日初版。111番)を描き下ろし。

f:id:buraburablue:20171028021327j:plain→『B型血液悪魔の誘惑』からは表紙絵を水玉模様っぽい枠で囲むようになり、上部には「血液型恐怖シリーズ」と記されるようになります。『A型血液の少女』も、再版は枠で囲まれているver.あり。

(注3)「星座占い」なら広永マキ
広永マキは「星座恐怖シリーズ」として『さそり座の少女呪いの微笑み』(昭和60年4月15日初版。94番)、『双子座呪われた誕生日』(昭和60年8月15日初版。102番)、『牡羊座呪いの学園祭』(昭和61年1月15日初版。105番)、『乙女座裏切りのワルツ』(昭和61年4月15日初版。107番)を描き下ろし。ちなみにあとがきによれば、次は「射手座」を描く予定だったらしいのですが、未刊行となってしまいました。

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<追記>
これは別枠の豆知識として用意してあったものなのですが、レモンコミックスの通し番号についても考察しておりました。
個人的に調べた限りですので多分としか言えませんが、昭和59年12月15日発行の89番、森由岐子『B型血液悪魔の誘惑』と同日発行の90番、好美のぼる『運命線は血みどろの蛇』から、背表紙下部のマークに通し番号が打たれ始めています。
それに伴って、書き文字であった「レモンコミックス」の文字も写植文字に変更されました。
それ以前のものは基本的に通し番号の表記が無いものの、裏表紙などに記載されている書籍コード中、5桁の箇所の下3桁が通し番号になると推測されます(通し番号が無かったものでも再版時に表記されたものがあり、そちらでは下3桁が通し番号と一致しているのを確認済みです)。

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こんな感じの原稿のほかにも、小ネタの大半がお倉入りとなっていまので、また気が向いたら、このブログに載せるかも知れません。

それでは。