ハシッコばっかりメにトマル。(仮)

フリーライター、キクタヒロシのブログです。新刊『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』発売中ですた!

『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』のお蔵入り原稿を、今回もちょこっと。

さて、前回の記事に引き続き今回も

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『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』彩図社 四六判・256頁  本体1300円+税(税込1404円))に収録できなかった原稿をば。
以下は巻末「特別コラム」の項に掲載しようと考えていたものです。
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<収録見送りコラム>

さがみゆき『美少女とカラス』(昭和47年3月31日発行/ひばりコミックス93番)

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さがみゆき(注)も怪奇マンガファンにはお馴染みの作家さんです。最も有名な作品は『口裂け女とお墓に手首』(注1)辺りかと思われますが、ここでは不穏な空気と脱力感が同居する怪作、『美少女とカラス』(注2)をご紹介しましょう。

平凡な女学生であったけい子の運命を変えたのは、転校生の美少女・桜子でした。彼女はけい子の隣の席になるや否や、死体写真を見せて来ます。普通であればヤバい人として黙殺するのが普通かと存じますが、反してけい子は興味津々。桜子はけい子の奥底に潜む、自分と同じ血を感じ取ったのでしょう。

そして二人は儀式として血が出るまで腕を噛み合い、永遠の友情を誓います。それ以来、カラスを始め小動物を虐待しては悦ぶなど、行動がエスカレートする二人。やがて桜子に心酔するけい子は、嗜虐こそ人間が持つ普遍的な快楽とし、それを隠している人々こそ異常なのだ、と考えるに至るのです。

で、結局はカラスの復讐にあって桜子は死亡するものの、けい子が第2の桜子となり、周囲の人を嗜虐の世界へと誘うというバッドエンド。

死体写真とかが苦手な僕からすると敬遠したい陰惨な展開なのですが、それに水を差すのが桜子の母。彼女は火傷や交通事故によって、髪も無く歯も無く、義手義足でした。それは同情すべき事なのですが、性格的に問題があり・・・。

入れ歯をしてカツラを被ると別人の様に美しくなる彼女は、桜子に憧れる同級生に対して一つ一つそれらを外して見せ、驚きと恐怖に引き攣る様を見ては、悦びに浸るのです。

文章にするとこれまた相当に陰惨な感じなのですが、下部に引用したコマをご覧ください。無表情に「ズボーン」とかやられると、恐怖するより呆気に取られてしまいます。
総じてさが先生の作品は、しっかりと読者を恐怖させる完成度の高い物語が展開されています。が、時折、「ズボーン」のような描写が紛れ込んで脱力を感じさせる事があり、それがまた、魅力となっているのです。

f:id:buraburablue:20171030015832j:plain→いきなりこんなもん見せられても…。

f:id:buraburablue:20171030015613j:plain→衝撃的な「ズボーン」の図。目元が凛々しいですね。

(注1)さがみゆき
昭和30年代後半に貸本マンガでデビュー、ひばり書房を中心に活躍された人気作家です。エロ劇画の分野でも活躍され、ひばり書房の別会社であるスカイラーク社のエロマンガレーベル「ロマンスCOMICS」でも『わたし、もぎたて』を発表なされています。
(注2)『口裂け女とお墓に手首』
ひばりヒットコミックスで刊行されたもので、タイトルの奇抜さで有名。『口裂け女』と『お墓に手首と指三本』という2作品が収録されているので、それを合体の上で「指三本」を引き算して、出て来たのがこのタイトル。ちょっと出ない発想ですね。ちなみに後年には『お墓に手首と指三本』と改題、副題として「口裂け女」が添えられていました。
(注3)『美少女とカラス』
ちなみに本作、ひばりヒットコミックスで『血まみれカラスの呪い』なる改題版も出ています。ジャケのインパクトでは、こちらに軍配が上がるでしょうか。

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と、ここで「ロマンスCOMICS」に触れているのですが、実はそれについてもK・ギマン『夜の学校に幽霊赤ちゃんが!』の項に対する余談として、コラムを書いてたりしました。
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<収録見送りコラム>
ひばり書房エロマンガ

K・ギマン『ロリコンちゃんの性教室』に触れたついでに、ひばり書房エロマンガについても少し。

それらはスカイラーク社発行、ひばり書房発売による「ロマンスCOMICS」レーベルにて刊行されたのですが、先ずは気に掛かるのがスカイラーク社の存在。
本の表紙周りではスカイラーク社の名しか見受けられないものの、奥付にはひばり書房発売の表記があり、二社の住所は一緒。これらから導き出されるのは、実質的にスカイラーク社=ひばり書房であり、流通上の理由か何かで別会社としたのではないか、という事。

というか、「ひばり」を英訳すると「スカイラーク」。その安直さ加減が素敵です。で、元々ひばり書房はスカイラーク社名義で音楽関係の書籍を発刊していましたが、それがエロマンガレーベルの発行元と化すのはマンガの刊行撤退より3か月前、昭和63年7月の事。マンガの発行から手を引くかどうかという瀬戸際において、起爆剤として導入されたのが「ロマンスCOMICS」レーベルだったと思われるのですが、結論から言えば不発、更には目先を変えようとした足掻きの表れか、妙なカオスが生じているのです。

7月刊行のミナコ本田(=結城春彦)『DOKIDOKIバナナ・ミルク』を皮切りに、さがみゆきの『わたし、もぎたて』、そら三鷹(=やまもと考二)『妹はパンプキン』、杉戸光史(みつし)『あぶない人妻』、そして『ロリコンちゃんの性教室』と、僅か3か月の間の5冊が刊行された訳なのですが、特筆すべきは異様に目を引く本の判型。

立て続けの発売だったにも関わらずA5判・B6判と違う大きさで交互に刊行、発行順に並べた時の凸凹さ加減は、同一レーベルである意味を考えさせられる程。

何かしらの意図があったのかも知れませんが、正直言って理解不能であり、そこに薄気味の悪ささえ感じます。が、そんな混迷具合もひばり書房「らしい」とも言え、皆様の記憶に留めて頂きたく、ここに記した次第です。

f:id:buraburablue:20171030021335j:plainf:id:buraburablue:20171030021344j:plainひばり書房の常連であった、さがみゆき杉戸光史の作品もラインナップ。当時、お二方はエロの分野でも活躍なされていました。
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ちなみに前回の記事の「レモンコミックス占いシリーズ(勝手な命名)」や今回の『美少女とカラス』は、書き上げた原稿が本に収まりきらないとなった時に、僕の判断でお蔵入りとしたもの、「ひばり書房エロマンガ」については担当編集氏の判断でボツとなったものです。

・・・とまあ、今にして思えばこの「ひばり書房エロマンガ」コラム、『昭和の怖い漫画 知られざる個性派怪奇マンガの世界』という本のタイトルからすればかなり脱線しているので、これをボツった担当編集氏の判断は客観的かつ適切でしたね。

それでは。